研究概要 |
精子不動化抗体(SI抗体)保有不妊婦人の末梢血リンパ球を精子抗原とPVMで刺激した後, PEGの存在下でマウスミエローマ株化細胞(NS-1)と細胞融合し3つのSI抗体産生ヒトーマウスハイブリドーマ(H6-3C4, 4A1, 4A4)を樹立した. 3者の抗体は共に強い精子不動化作用と精子凝集作用を有するIgM(λ)抗体で, ヒト射精精子の蛍光染色パターン, 精子に対する競合的抗体結合阻止実験およびH6-3C4細胞から単離した抗体遺伝子(VH-3C4, Vλ-3C4)と各ハイブリトーマ細胞から抽出したRNAとDNAを用いて行なった. Northern及びSouthern blot分析実験結果より3つのハイブリドーマが同じ抗体遺伝子を使って同一の抗体を産生していることが判明した. H6-3C4抗体はヒト射精精子並びに精漿抗原と反応することから精子付着精漿抗原に対する抗体で, 補体の存在下で強い精子不動化作用を示す. 清漿中での対応抗原は, 飽和硫安塩析による精漿蛋白のSephaoryl S-300ゲルろ過でVoid分画に溶出される分子量670Kd以上の巨大分子として存在するが, 精漿蛋白のSDS-PAGE分画のイムノブロッティングでは, 還元及び非還元条件下で20Kd付近の広いバンドとして認められた. 精漿蛋白の熱処理, 各種protease処理では強い抗原性の低下は起こらなかったが, periodic acid及びtrifluoromethane sulfonicacid処理で抗原性が著しく低下した. また, 各種giycosidase処理実験ではStreptococcus sp由来のneuraminidase(β-galactosidaseとβ-N-acetylglucosaminidaseを混在)及びβ-galactosidaseで抗原性の低下をみた. H6-3C4抗体と精子との結合は, リンパ球を提供したもとの患者血清によって強く抑制されたが, 他の多くのSI抗体保有患者血清は1例を除いて有意な結合阻止を示さず, H6-3C4クローンの出現は不妊患者の中でも非常に稀なものと考えられた.
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