研究概要 |
モルモットを使って, 内耳の流出静脈である蝸牛小管静脈を閉塞し, 蝸牛血流, 蝸牛内直流電位, 内外リンパ圧に及ぼす影響につき検討した. 蝸牛小管静脈閉塞により蝸牛血流は20〜50%程度減少したが, 蝸牛出血をおこす例では蝸牛血流は50%以下に減少した. 蝸牛内直流電位は変化しなかった例も多かったが, 一過性あるいは持続的に低下する例もみられた. 内外リンパ圧はすべての例で一過性に上昇した. このようにモルモットでは蝸牛小管静脈は, 内耳の最も大きな流出静脈ではあるが, 他に内耳から流出する静脈があることを生理学的に示唆する所見が得られた. 蝸牛窓膜破裂が蝸牛血流にどのように影響するかについてもマイクロスクウェアー法にて検討した. モルモットの蝸牛窓膜を単に針にて破っただけでは, 蝸牛血流は有意な変化を示さなかった. (しかしながら, 内耳にガラス毛細管を挿入することにより人為的に内耳圧を上昇させその上昇した内耳圧に抗しきれなくなり蝸牛血流が著明に障害されている時, 蝸牛窓膜破裂がおこると内耳圧が減少し, 蝸牛血流はむしろ回復することがわかった. すなわち, 普通の状態では蝸牛窓膜破裂自体は, 蝸牛血流に直接影響を与えないが, 内耳圧が上昇している時, 蝸牛窓膜は内耳圧低下のための完全弁として破裂する場合を認めた. また, モルモトに内耳気圧外傷をおこし, マイクロスフェアー法にて蝸牛血流がどのように変化するかについても検討した. 内耳気圧外傷2日後の測定では, 蝸牛血流は全体としては有意には変化しなかった. しかし, コルチ器を含むラセン板部には蝸牛全体の血流量の約1割程度が流れているが, ラセン板部の血流は減少する傾向を認めた.
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