研究概要 |
Qスイッチとモード発振方式による2種のYAGレーザーを用いて, 組織破壊の過程と両者の差異を形態学的並びに生理学的に検討を行った. また破壊の程度を検索する為にアクリル板を用い, それぞれのプラズマ化の効果を比較した. 次にこのエネルギーの拡散の網膜への影響を検討する為に, 同様の出力を用いて正常有色家兎の硝子体腔中央部でプラズマを生じさせた. これを臨床的, 蛍光眼底造影, 及び硝子体蛍光測定法で検討した. 以上の実験から, 従来の報告と異なりQスイッチとモードロック方式では硝子体内での臨床効果に差異があり, Qスイッチではエネルギーの拡散が大きく, 後部硝子体での照射では網膜合併症を引き起こす可能性が高い事が確認された. 次にYAGレーザーによるプラズマ形成およびこれに伴うshielding効果等その物理特性は, プラズマ化をどこで発生させるか, つまり空気, 水等で異なるとされている. 従ってYAGレーザーを眼球内で照射した場合, その照射部位が前房あるいは硝子体の場合同出力でも媒体の種類の違いによりその照射組織の破壊効果およびその後方でのshock waveの影響が異なることが予想される. これを検索するために, 模擬眼を作成し, 圧トランスデューサーを用いこの1mm前方でプラズマを発生させ, 模擬眼の中の媒体を水, 家兎硝子体, シリコンオイル等に変えることで, shock waveの変化を検索した. この結果出力や媒体を変えることで, 衝撃の大きさに変化があったが, この装置で記録された波形は同じであった. またどの媒体においても出力の増加にともない衝撃波も大きくなる傾向にあるが, この程度は媒体により違い, シリコンオイルではほとんど変化なく, 家兎硝子体で最大であった. これらの実験結果は, まだ安全性が充分に確立されていないYAGレーザーの臨床応用において, 極めて重要な知見である.
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