研究概要 |
全層角膜移植は近年種々の面で改善され, 移植成績も向上されて来た. 移植後の混濁を起こす原因の一つに免疫反応がある. 移植後の免疫反応抑制には依然ステロイド剤が使用されているが, 種々の副作用がみられる. 全層角膜移植後の免疫反応抑制に対して各種免疫抑制剤の眼局所への応用を試みた. 我が国で開発されたミゾリビンを家兎角膜移植後に10mg/kg皮下注射及び生食水で溶解した10%,5%,2.5%,1%点眼剤を1日5回点眼して100日間観察した. 皮下注射群及び2.5%以上の点眼群でコントロール群と比べて角膜移植片の透明維持が出来た. この結果から臨床応用を試みた. 術直後或いは血管侵入時から1日100mg内服投与した60眼中14眼(25.5%)に免疫反応の発症がみられた. 一方コントロール群では126眼中58眼(46%)にみられ, 有意にミゾリビン内服投与群で発症の抑制が出来た. しかし再移植例のみを比較すると有意な抑制効果は認められなかった. 10%に溶解したミゾリビン点眼投与剤では22眼中3眼(13.6%)に免疫反応の発症がみられ, コントロール群の108眼中45眼(41.7%)と比べて有意な抑制効果が得られた. 我が国で開発中のFK-506を0.1mg/kgを家兎角膜移植後に毎週2回結膜下注射し, 100日後の角膜移植後の透明維持を調べた. FK-506投与群では全例透明性が得られ, 有意な抑制効果を得た. 抗Ia抗体の投与はIa抗原をブロックすることが推察されている. 家兎眼角膜移植後に抗Ia抗体30μg/ml,3μg/mlを1日5回点眼し, 免疫抑制効果を調べた. 両抗Ia抗体点眼群ではむしろコントロール群に比べて短期間に血管侵入も強く角膜移植片の混濁が認められた. これは抗Ia抗体が角膜内のIa抗原と過剰に反応したゝめと思われる.
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