研究概要 |
Wistar系雄性ラットを用い, 臼菌部歯肉溝よりプロスタグランディン(PG)を浸透投与することにより, あるいは歯根膜由来培養線維芽細胞を利用し, PGの辺縁歯周組織に及ぼす作用機序を, 光顕・電顕観察, 組織化学, 免疫組織化学などの方法を利用して, 病理形態学的な面から検討した. その結果前年度までに, 局所投与したPGE_2(1mg/mlアルコール生食水液)によって惹起される辺縁歯周組織の経時的な形態変化を明らかにすると共に, 破骨細胞出現の経時的変動の測定, これらの変化に伴う酸性ホスファターゼの局在分布の証明, リポポリサッカライド(LPS)の局所投与後に生じる変化との比較検討等をおこなった. 続いて今年度は, 1.0.001〜2mg/mlの各種濃度のPGE_2の局所投与による変化の違いを比較し, 上記の変化が0.01mg/mlの濃度で明らかに生じ, 1mg/ml以上では細胞の変性所見が目立つこと, その際見られる破骨細胞数の増加のピークは, 0.1〜0.5mg/mlの濃度でみられることを明らかにした. また, 2.免疫組織学的PGの検出には10%ホルマリン固定・凍結切片で良好な結果が得られ, 3.ラットの肝, 胃, 肺の実質細胞やMφに, またヒト歯肉上皮下のMφにPGE_2陽性所見を認め, 4.LPSの局所投与後に, PGE_2陽性所見を示すMφが歯肉上皮下に増加すること, 5.PG投与後歯根膜線維芽細胞のコラーゲン貪食空胞内や細胞間基質に, ALP陽性反応の増強が認められることなどを明らかにした. 以上より, PGE_2が破骨細胞の活性化による歯槽骨吸収や線維芽細胞によるコラーゲン線維の貪食消化能の亢進をきたし, 歯根膜の破壊に重要な働きを果たしている可能性が示唆された. また, このような働きをするPGの由来の1つとしてLPSの刺激によって産生されるMφ由来のPGが考えられた. 現在, 歯根膜部におけるPGE_2の免疫組織化学的局在の証明, PGE_2による線維芽細胞のコラーゲン線維貪食能亢進に関する組織培養法を用いた検討を試みている.
|