研究概要 |
光重合型臼歯用コンポジットレジン修復材の破壊に対する抵抗性について検討し, 下記のような結果を得た. 1)4種光重合型レジン, および対象として3種化学重合型レジンを用い, 試片は幅3mm, 高さ3mm, 長さ25mmの金属製モルド中にそれぞれを填入, 光重合型は計8分間照射を行い重合させ, 化学重合型はメーカー指示に従い練和後, シリンジを用いて填塞, 圧接重合させ, 各材料とも1W〜3M間水中保管後, 通法により吸水量の測定を行った. その結果, 光重合型における吸水量の経時的変化は, 保管期間の延長とともに増加する傾向が示されたものの, 1M保管以後はいづれも僅かな増加のみであった. 一方化学重合型では, 同様な傾向が示されたものの, 2M保管まで著明な増加を示すものもあった. 圧痕法による破壊靭性値(Kc値)の測定は, ビッカース硬度計により各試片の中央下部に対して圧痕を印記し, 圧痕径並びに圧痕周囲に生じた亀裂長さより, Kc値を算出した. その結果, 各材料とも1日保管でのKc値はほぼ同程度の値を示したが, 保管期間の延長に伴いその減少傾向が示され, 水分による劣化の影響が窺われた. ビッカース硬さにおいて, 光重合型には化学重合型に比較するとやや高い傾向を示したものの, 各種材料とも保管期間が延長されても, ほとんど影響を受けずほぼ一定の値を示した. 2)圧痕法によって生じた予亀裂を用いた三点曲げ試験時における, 化学重合型のアコースティックエミッション(AE)特性は, 負荷の比較的初期に共通して亀裂の進展が推測されるAE事象数の増加が示され, その後は材料間に多少の相違が見られるものの, 類似の傾向をもって亀裂の成長, 進展あるいは停止が繰り返されて破断に至っている. 3)破壊靭性試験により導入された亀裂を予亀裂として, 三点曲げ応力による繰り返し疲労試験を行った試片のSEM像を観察すると, 各種材料とも予亀裂から疲労応力により生じたと思われる縦亀裂が観察された.
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