研究概要 |
本研究は生体内オピオイドペプチド系に対する鎮痛薬の影響を検討することを目的とした. 1.in vivo実験では, ラットに薬物を投与し, 歯髄, 副腎髄質およびプラズマ中のエンケファリン含量を測定, その薬物による変動を検討し, 2.in vitro実験では, (1)歯髄および副腎髄質に薬物を作用させ, それぞれのエンケファリン含量および遊離量を測定し, (2)一方, 合成基質BANAの組織酵素による分解に対する薬物の影響を検討し, (3)また, プラズマにおけるブラジキニン産生および分解に対する薬物の影響を検討した. 1.in vivo実験では, アジュバント関節炎ラットを用いた. 発症に伴い疼痛閾値は著明に低下し, それに相関して副腎髄質およびプラズマのエンケファリンレベルが上昇および低下した. これに対して鎮痛薬Y-20003は疼痛閾値の回復をきたし, 麻薬拮抗薬で疼痛閾値の低下が認められた. これらの事実から, Y-20003の鎮痛作用機序として, 生体内オピオイドペプチド系を介する可能性が強く示唆された. 2.in vitro実験では, 主として鎮痛薬Amfenacの生体内オピオイドペプチド系およびキニン系に対する影響が検討された. (1)Amfenacは歯髄エンケファリンの含量および遊離量を著明に抑制し, (2)また, BANA分解酵素活性を歯髄および副腎髄質において著明に抑制した. これらのことから, 鎮痛薬Amfenacの作用は生体内オピオイドペプチド系を介するものではないと考えられた. (3)そこでプラズマにおけるトリプシンのブラジキニン産生に対するAmfenacの影響を検討し, Amfenacは1μMの濃度においてトリプシンのブラジキニン産生活性を著明に阻害することが見出された. Indcmethacinlurlは阻害作用を示さなかった. 以上の成績を総合すると, 解熱性鎮痛薬はプロスタグランジン生合成阻害作用以外に, あるものは生体内オピオイドペプチド系を主として介し, またあるものはキニン産生系の阻害を主とし, それぞれ異なった作用機序を有するものと考えられた.
|