研究概要 |
ラットの大脳皮質味覚野と視床下部外側野に, 微細金属電極を埋め込み, 手術からの回復後, 動物が各種の味溶液, 固型飼料などを自由に摂取しているときのニューロン活動を記録した. 味応答性ニューロンに対する他の感覚主の刺激効果を調べるため, 口腔領域の触や温度刺激(体性感覚刺激), におい刺激(アーモンド臭 酢酸臭)や, 内臓刺激(塩化リチウムの腹腔内投与)などの刺激も行なった. 実験後は, 記録電極を介して直流通電し, 記録部位をマークし, 組織学的に確認した. 1.大脳皮質の味応答性ニューロンは, 動物の嫌う溶液(塩酸, キニーネなど)と, 好む溶液(蔗糖など)との間で異なった応答態度を示すものと, ある特定の味に特異的に応じるものに分類された. 後者は前者の4倍多く認められた. また, 後者には, ラットの固型飼料の味によく応じるニューロンも見出された. 約1/4のニューロンは, 味刺激のみならず, 口腔領域の体性感覚刺激にも同時に応じたが, におい刺激や, 内臓刺激に応じたニューロンは, ごくわずかであった. 動物が自発的に溶液を摂取したときと, 口腔内に人為的に溶液が注入されたときで, 異なった応答パターンを示すニューロンも存在した. 2.絶水下のラットに各種の溶液を自由に摂取させる実験課題において, 視床下部外側野には, 多様な応答特性を示すニューロンが存在することがわかった. このうち, 溶液を求めて期待し, 探索する行動に関与すると思われるニューロンや, 対象物に接したとき, それを受容しようとするか拒否するかによって異なった応答パターンを示すニューロンが認められた. ある特定の味質溶液に応じるニューロンの数が非常に少なかったことから, 味の質の情報処理は視床下部の主たる働きではないと思われる.
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