研究概要 |
免疫組織学的研究より, 一次知覚神経には, サブスタンスP・(SP), CGRP(Calxitonin gene-rolated peptide), ソマトスタチン等のペプチドが存在することが明らかにされ, 痛覚情報との関連において注目されているものの, どの様な役割を分担しているのかは不明である. 本研究では, 各種感覚刺激の違いにより一次知覚神経から感覚特異性を有する情報伝達物質が遊離されるのではないかという考えにもとずき, まず歯痛伝達物質を同定する目的で歯痛伝導路の第一次中継核である三叉神経脊髄路核尾側亜核浅層領域(SpVc-I,II)にpush-pull cannulaを挿入, 人工脳脊髄液にて潅流し歯髄刺激時, 潅流液中に遊離される一次知覚神経含有ペプチドの同定ならびに遊離調節機構の解明を行った. 1.歯髄電気刺激(40V)によりSPおよびMet-ewkophalinの著明な遊離増加が認められた. SPと同じタキキニンであり一次知覚神経にも存在が見いだされているサブスタンスK(SK)の遊離は観察されなかった. またSPとの共存が知られているCGRP遊離は歯髄刺激に伴い増加する傾向を示した. 2.歯髄刺激に伴うSP遊離増加は, オピオイド前処置により抑制された. 3.無刺激時, 潅流液中でエピネフリンおよびセロトニン遊離が観察され, このセロトニン遊離は, モルヒネ投与により著明に増加した. 4.SpVc-I,IIへのセロトニン直接投与により歯髄刺激に伴うSP遊離は著明に抑制された. 以上の実験成績より歯髄伝導路の第一次中継核SpVc-I,IIでの歯髄伝達物質は主としてSPであることが明らかにされた. また, この一次知覚神経中枢端より歯髄刺激に伴い遊離されるSPは, エンケファリン系(髄節性制御機構)ならびにセロトニン系(下行性制御機構)によって調節されている可能性も明らかにされた.
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