研究概要 |
Screptococcus mutans(St.mutans)は, う蝕発生初期における口腔内常在の病因菌であり, う蝕発生の機序の研究において, 注目されている. 我々は, St.mutans LM7株(セロタイプe)が, 他のセロタイプに属するSt.mutansの増殖を抑制するバクテリオシン様物質(ムタシン)を産生する事に着目し, そのムタシンの分離精製およびその遺伝子のクローニングを試みた. St.mutansのプラスミドとムタシン産生が関連しているという論文が発表された事などから, まず, LM7株のプラスミドpAM7をクローニングし, バクテリオシン産生との関連を調べた. その結果, 残念ながら, LM7株のプラスミドは, ムタシンをコードしていないと結論した. そこで, LM7株の染色体DNAライブラリーをラムダファージλL47を用いて作製した. 一方, ムタシンの精製を検討し, 超遠心及びゲルロ過法が有効であることがわかった. しかし, 精製したムタシンは, 他のタンパク質と会合体を形成しており単品としてどうしてもえ得ることができなかった. しかたないので, 部分精製ムタシンに対する抗体を, ウサギを用いて作製し, その抗血清で, DNAライブラリーのスクリーニングを行った. その結果, 数10個のポジティブクローンを得ることができた. そのクローンが産生するタンパク質を調べたところ, 得られたタンパク質は, 分子量18-19万のものであった. ところが, クローンタンパク質は, St.mutansの表面抗原タンパク質の抗体と交差反応する事などから, 得られたクローンは, ムタシンの遺伝子ではなく, 表面抗原タンパク質の遺伝子をコードしていると結論した. 現在, 用いた抗体から, 表面抗原に対する抗体を吸収し, さらに, DNAライブラリーをスクリーニングしている. もし, 成功した場合は, いずれ別の論文で表面する予定である.
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