研究概要 |
1.マウス脾細胞から産生される蛋白性質吸収因子(OAF)の精製 マウス脾細胞から精製した因子の中から骨髄性白血病細胞(M1)をマクロファージに分化させるD-factorに骨吸収活性のあることが明らかとなった. また, 同時に精製したコロニー形成因子(CSF)については骨吸収活性が認められなかったが, D-factorの骨吸収促進作用を増強する事がわかった. 2.CSFのマクロファージ増殖促進作用 CSFは骨髄細胞の増殖と分化を促進することが知られている. マウス脾細胞から産生されるCSFを精製し, 肺胞マクロファージに対する作用を検討したところ, 肺胞マクロファージの増殖を促進することが明らかとなった. さらに, CSFのマクロファージの増殖促進作用はマクロファージを融合させる作用を持つ1α_125(OH)_2D_3を添加すると, 完全に抑制された. 3.精製D-factorの破骨細胞形成に及ぼす作用 精製D-factorを用い, 破骨細胞の前駆細胞や骨芽細胞に対する作用を検討した. マウス骨髄細胞の長期培養系にD-factorを添加したところ, 酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ陽性の破骨細胞に類似した多核巨細胞の形成促進がみられた. また, この効果は, 骨吸収抑制作用を示すカルチトニンの併用添加により抑制された. 次に, マウス骨芽細胞株MC3T3-E1細胞に対する作用を検討したところ, 軽度の増殖促進効果を示した. さらに, MC3T3-E1細胞の培養上清を原料とし, D-factorを精製し, その作用を調べた. その結果, 脾細胞由来のD-factorと同様に破骨細胞の形成を促し, 骨吸収作用を発揮した. 以上の知見は, 破骨細胞の形成ならびに骨吸収の発現には骨芽細胞が重要な一因となっていることを示す.
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