研究概要 |
ラット三大唾液腺の各腺の分泌性機能分節に含有される特定の分泌性糖蛋白分子種が、薬物刺激の種類によってどのような割合で唾液中に現われるかをアドレナリン性【α_1】-作働薬[メトキサミン,MET;8mg/kg,i.p.],【β_1】-作働薬[ドブタミン,DOB;20mg/kg,i.p.]およびコリン性作働薬[コルバコール,CAL;50μg/kg,i.p.]を用い研究を行った。その結果、1.各腺の腺房部の糖蛋白分子種の数は、舌下腺で10本,耳下腺で6本,顎下腺で4本であった。また、各腺房で相対率の最も高い分子種の見掛けの分子量は、顎下腺で130KDa(SM-【I】),耳下腺で約23KDa(PA-【I】),舌下腺で200KDa(SL-【I】)以上であった。一方、顎下腺顆粒管のそれは31KDa(SM-【II】)であった。2.分泌唾液の蛋白濃度の濃さは、3腺混合、顎下腺および顎-舌下腺唾液でDOB>>MET>CAL,耳下腺唾液でDOB>>CAL>METの順であった。3.分泌唾液の糖蛋白バンドの数は、3腺混合唾液でCAL>>MET〓DOB,顎下腺唾液でCAL〓DOB>MET,顎-舌下腺唾液でCAL>>DOB>METの順番となり、耳下腺唾液ではいずれの薬物でも同数であった。4.各種薬物による分泌唾液の糖蛋白の主要バンドは、3腺混合唾液ではDOBでPA-【I】,METでPA-【I】とSM-【II】,CALでSL-【I】であった。顎下腺唾液ではDOBとCALでSM-【I】,METでSM-【II】であった。顎-舌下腺唾液では、DOBでSM-【I】,METでSM-【II】,CALでSM-【I】がその大部分を占めた。また、耳下腺唾液では、いずれの薬物でもPA-【I】が主体で、ほぼ同程度の染色性を示した。 以上の成績より、ラット三大唾液腺の各腺の機能分節より分泌される糖蛋白分子種の種類とその割合は、刺激薬の種類によって異なり、アドレナリン性【α_1】-作働薬では耳下腺の腺房(PA-【I】)と顎下腺の顆粒管由来(SM-【II】),アドレナリン性【β_1】-作働薬では耳下腺の腺房由来(PA-【I】),コリン性作働薬では舌下腺の腺房由来(SL-【I】)のものが主体となって分泌されることが明らかとなった。
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