研究概要 |
歯列不正を有する若年者には, 永久歯萌出期に種々の歯周病学的問題が多発し, 歯肉の炎症, 歯肉歯槽粘膜異常が発生しやすい. このような問題に対して歯周初期治療を中心とした方法で歯周管理し, その効果を臨床的パラメーターと, 歯肉溝滲出液中の酵素活性, 白血球数の変化, 細菌叢の変化として観察した. その結果, 治療前後, これらのパラメーターの変化を総合的に観察することが歯周組織の治癒, 回復の判定に有効であることがわかり以下の結論を得た. (1)歯列不正を有する若年者の場合, 歯周組織の異常が多発し, 矯正治療と歯周治療がチームアプローチで管理を徹底すれば歯周組織の治癒と回復, 維持できることが判明した. (2)臨床的パラメーターであるGingival Index,Plaque Index,probing dephは歯周治療の結果きわめて良好な状態となり, 歯周初期治療の効果と若年者の回復能が反映された. (3)歯肉溝滲出液中のcollagenaseには活性型(active form)と潜在型(latent form)が存在していることが判明した. 歯周治療後の総活性は減少したが, latent/activeの比には上昇がみられた. このことは, 歯周治療前の歯肉滲出液ではcollagenaseは活性型になっており, 炎症状態を反映している. 一方, 治療により組織が治癒してくると活性型のcollagenaseは減少し潜在型になっている割合が多くなることが判った. (4)歯肉溝滲出液中の総phosphatase活性の上昇は歯肉溝滲出液中のタンパク量に比例し, タンパクあたりのacid phosphatase/alkaline phosphatase活性比は約2.0であった. (5)歯肉溝滲出液中の白血球数の部位別, 定量的測定により, 治療効果を把握することが可能であることが判った.
|