研究概要 |
レジン床義歯は金属床義歯に比べ, 審美性に優れ, 技巧操作の簡便さ, 安価であることなど多くの長所を有していることから一般に広く用いられている. しかし, レジン床義歯はかなりの長時間をかけて作製されている. また, レジン床義歯は床の厚さを薄くできず, 患者に対し装着時に違和感を与える要因の一つとなっている. そこで, 本研究では, 小型射出成形機を歯科用として一部改良した成形機を基に, 新しい義歯床用材料として改良したペレット状のポリスルフォンおよびアクリルを用い適合性の良い薄肉レジン床義歯の簡易作製法について基礎的な検討を行なった. そこで得られた結果を要約すると次のとおりである. (1)スプルの位置, 形態について最適な条件を確立することができた. (2)成形精度については, 用いた石コウの粒子が微細で熱変形にも強いことから, 優れた寸法精度が得られた. (3)射出成形により作製したPESの義歯床は通常の成形方法で作製したレジン床義歯に比べ曲げ強度は向上する. (4)義歯床の作製時間は短縮され, 審美性に優れた適合性の良い義歯床が作製できる. このように, 射出成形による義歯床の簡易作製法について検討を行なったが, さらに, これまでに得られた結果を基に, 金属補綴物との接着性, 動的特性(疲労特性)について検討を加えるとともに補綴学的評価を行ない高精度レジン床義歯の実用化を計りたい.
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