研究概要 |
口腔常在菌としてStreptococcus mutans OMZ-176およびStreptococcus sanguis ATCC10556を用い、各種インプラント材料(単結晶アルミナ,多結晶アルミナ,ハイドロキシアパタイト,チタニウム合金,コバルトクロム合金,加熱重合レジン)に対する両菌株の付着を観察した。また接触角を測定することにより、インプラント材料および細菌の表面自由エネルギーを算出し、菌の付着現象について物理化学的な検討を行った。 インプラント材料に対する両菌株の付着傾向は材料間で異なり、多結晶アルミナに対する付着菌数が最も少く、加熱重合レジンに対する付着菌数が最も多かった。また、各インプラント材料の表面自由エネルギーと、それに対する両菌株の付着菌数の対数との間には強い負の相関が認められ(P<0.05),材料表面が疎水性に傾くほど付着菌数は増加した。また、付着による自由エネルギー変化と、それに対する両菌株の付着菌数との間には負の相関が認められた(P<0.05)。 さらに、インプラント材料表面を唾液あるいは血清で処理した後、同様の実験を行ったところ、多結晶アルミナを除く全ての材料において表面自由エネルギーの増大および付着菌数の減少が認められた。しかし、各インプラント材料の表面自由エネルギーあるいは自由エネルギー変化と、それに対する両菌株の付着菌数の対数との間には有意の相関は認められなかった。 以上の結果は、インプラント材料に対するStreptococcus mutans OMZ-176およびStreptococcus sanguis ATCC10556の付着機構に疎水結合が関与することを強く示唆するとともに、唾液あるいは血清の存在下における付着にはさらに別の付着機構が関与している可能性を示している。この科学研究費補助金により多大な研究成果を得られたことを報告する。
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