研究概要 |
器官培養法を応用して、生体に使用される材料の組織適合性を検討した。使用材料はコバルトクロム合金(【Co^-】Cr)と接着性レジンである。【Co^-】Crとしてはメタキャスト(Metと略,Co62%Cr32%Mo4%その他2%),ドラリアムJD(JD,Co68%Cr26%Mo4その他2%),スマロイコバルト(SM,Co61%Cr26%Mo7%Ti0.5%その他5.5%),サンコリュームハード(SUN,Co57%Cr23%以上Ni5%以上Mo3%W3%その他9%以下),接着性レジンとしてスーパーボンドC&B(SUP),パナビアEX(EX),比較のためクリアフィルF【II】(CL),光重合レジンのデュラフィル(DU),対照として直径0.3mmのガラス棒を用いた。これらの材料を直径0.3mmの線状に調整し、無菌的に摘出した鶏胚大腿骨にこれら試料を挿入し、7日間回転培養した。培養後、長さの成長率や湿重量/乾燥重量比(W/D),組織標本等によって各試料の組織の影響を検討した。その結果、鶏胚骨の長さの成長率では対照に対してMet110.1±13.1%,JD108.6±15.4%,SM96.0±7,5%,SUN98.8±7.3%,SUP106.1±9.0%,EX102.4±5.3%,CL110.5±3.7%,DU94.4±13.5%となり対照と有意な差はなかった。またW/Dは対照に対してMet91.3±5.3%,JD99.8±4.0%,SM101.3±3.8%,SUN101.9±6.5%,SUP98.5±7.9%,EX104.2±4.3%,CL98.5±7.9%,DU102.2±5.8%であり、Metのみが対照に対して小さい値を示しているが、組織像を調べると対照と差はあまりなく、W/Dが大きい場合は問題となるが、組織像より判定して小さい場合は問題ないと思われる。組織像では対照と比較して、【Co^-】Crは試料と隣接した部分に結合組織層の存在を認めるものの大きな差はない。一方、CLは対照よりも組織の細胞に限られてはいるが、影響を与えている。これに対しSUPやEXはCLよりも細胞への影響範囲が少なかった。したがって、【Co^-】Crは組織に大きな影響はなく、接着性レジンはレジン硬化後に関しCLより影響は少ない材料と考えられる。
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