研究概要 |
試作した微小バルジ試験治具は10×10mmの試料をステンレス鋼製上部金型と下部金型で周辺を固定し、島津オートグラフを使用してクロスヘッドスピード1mm/minで2,4,6mmφの鋼球を押し込みながら、その変位量と荷重の変化をXYレコーダーで記録した。試料は金,銀合金系5種,Kメタル,Ni-Cr,Co-Cr系合金7種を用いて、バルジ試験用3枚、引張試験用3本、ビッカース硬さ1枚のパターンをクリストバライト埋没材、リン酸塩系埋没材を使用し、それぞれ指定条件で鋳造した。その結果じん性測定に良いとされている従来のシャルピー衡撃試験のように材料を一瞬時に完全に破壊することなく、荷重変位曲線を求めることが可能である。また、その曲線から弾性領域,降状開始,バルジへの遷移領域,破壊領域の過程が求められる。バルジ試験による破壊後の破断面のSEM写真からも金合金系の軟らかいものでは延性破壊を示し、Ni-Cr,Co-Cr系、低融銀合金等の硬たく、もろい合金ではぜい性破壊の傾向が見られる。バルジ試験で鋼球4,2mmを使用した場合、最大引張強さ-バルジ最大破断荷重(最大破断荷重/押し込み表面積)の間に高度の相関が認められた。また両者間の伸びも同様であった。ビッカース硬さ-バルジ最大破断荷重間も相関があった。このことから歯科鋳造用合金の引張試験等の場合その試験片の形状や多量の金属を必要とすることが多いが簡便な方法で少量の合金でも合金の特性値を得ることが可能であり、周辺固定の方法を改良すればアマルガムや低融銀合金など、硬たく、もろい合金は従来間接引張強さにより行なわれているがこれらの測定も可能であろう。以上の試験結果を第9回歯科理工学会(於、長崎大学昭和62年4月4日)に発表予定である。
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