研究概要 |
歯科用材料の生物学的性質をしらべる場合, 組織培養法, 動物実験法そして臨床使用における評価などが利用されている. しかしながら, これらのテスト法にはそれぞれ特長があるものの, 種々な歯科用材料にあてはまる実験法は残念ながら規格化されていない. また, 動物実験法においては定量的な判定もなされていない. 本研究は動物実験法と組織培養法を規格化し, 定量的に判定を行いそれらの関連性を追求することにより, 材料の組織刺激性を評価した. 1.動物実験法 (1)『ラット臼歯窩洞形成装置』を開発し実験に用いた. このことにより実験条件を一定にすることが可能になった. (2)歯科用アマルガムは組織刺激反応量(I/P比)が大きな値を示し, 強い組織刺激性があった. コンポジットレジンのI/P比は歯科用アマルガムより小さかった. 合着用および裏装用セメントのI/P比は歯科用アマルガムやコンポジットレジンより小さい値であった. 2.組織培養法 (1)短期間培養法を応用することにより歯科用成形充填材の時間経過に対する細胞毒性をしらべることができた. (2)歯科用アマルガムとコンポジットレジンは練和後1分から60分まで強い細胞毒性の持続性があった. 合着用セメントは練和直後には強い細胞毒性があったが, 練和後30分には急激な減少を示した. 裏装用セメントにおいては4種の成形充填材料中で最も少ない細胞毒性であった. 歯科材料の組織刺激性をより正確に把握するためには動物実験と組織培養の両実験法を行うことが必要であり, 本研究はそれらを考えていく上で, 1つの大きな指標となるであろう.
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