研究概要 |
歯髄および歯根膜電気刺激による大脳皮質誘導電位の導出部位の検索, さらに, 各刺激に対応する誘発電位の波形の相違を検討するために実験を行った. 1方法;ペントバルビタール静脈麻酔下, パンクロニウムで不動化した家兎の下顎切歯歯髄および歯根膜にステンレス針電極を刺入して, 0.1ms, 10mAの矩形波電気刺激(定電流)を与えた. 大脳皮質誘発電位の導出のために刺激と対側眼球を摘出後, 頭頂より側頭部頭蓋骨を慎重に除去し, クモ膜上を1〜2mm間隔で広い範囲から導出し, mappingした. 導出電極にはφ0.5mm銀電極を用い, 生体アンプで増幅後, コンピュータで30〜200回加算平均した. 誘発脳波導出後下顎骨体部で下歯槽神経を露出し, 各刺激による複合活動電位をオシロスコープでモニターし, 写真撮影し記録した. 2.結果;大脳皮質誘導発電位はSiの下法領域および頭頂A-2, L4を中心とした狭い領域よりP_7, _<15>, P_<15>〜_<20>成分を有する波形が得られ, これらの波形の振幅は歯髄刺激と歯根膜刺激とでは明らかに違っていた. また下歯槽神経複合活動電位は潜時0.1msの速い成分と, 潜時0.5msの遅い成分が観察され(伝導距離, 20〜25mm), 振幅は歯髄刺激と歯根膜刺激とでは異っていた. 二つの反応は, 麻酔深度, 中枢性鎮痛剤により変動する傾向にあった. 考察;大脳皮質誘発電位の15ms以上の成分の成因については明らかでなく, 今後, 例数を増し, 刺激強度と複合活動電位の潜時と振幅の関係から検討を加える必要がある. また, 頭頂部より得られた大脳皮質誘発電位とSiより得られた電位との関係も不明であるため, 麻酔深度, 中枢性鎮痛薬に対するそれぞれの反応を考慮しさらに検討する必要がある.
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