研究概要 |
最近の顎関節腔造影エックス線検査の普及に伴い, 関節円板における転位の有無は比較的容易に診断できるようになったものの, 転位に伴う円板変形の程度を的確に把握することはきわめて難しいといえる. そこで私たちは, 顎関節内障における顎関節円板の病態解明の一助とすべく, 上下顎関節腔造影多層断層エックス線写真を最新のコンピュータ画像処理技術の応用により処理し, 関節円板の3次元的画像再構築を試みた. 関節円板の3次元画像再構築にさきだち, まず乾燥頭蓋骨を用いて顎関節部同時多層断層エックス線写真および同部エックス線CT写真を撮影し, 日本光学工業社製3次元画像解析システムNikon Cosmozone-2Sにより下顎頭形態の3次元的再構築を行い, 本システム適応の妥当性の検討を行うとともに, 3次元画像再構築に必要な各種パラメータの最適値を求めた. ついで復位を伴わない関節円板転位例を対象に, 閉口時ならびに最大開口時に上下顎関節腔造影多層断層エックス線撮影を行い, 得られた上下顎関節腔同時多層断層エックス線写真の連続断面像(5枚)から, 上下関節腔に満たされた陽性造影剤の輪郭線をデジタイザーを用いてパーソナル・コンピューターに入力し, それらの輪郭線を重ね合わせたワイヤーフレーム, サーフィスモデルなどを作製し, ディスプレイ上あるいはプリンターに出力した. なお画像表示に際し, 回転, 拡大, 任意断面での切断などの3次元処理を併用し観察を行なった. その結果, パーソナル・コンピュータを用いる本システムにより, 簡便に関節円板の3次元形態表示が可能となり, 3次元形態の観察から開口に伴う関節円板の変形様相がきわめて複雑であることが判明した. 今後顎関節内障における円板変形やこの関節円板3次元形態再現システムにおける臨床応用上の問題点について検討をすすめたい.
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