研究概要 |
習癖に起因したと思われる所謂機能型乳歯列不正咬合の2年間に亙る連続歯列模型の計測平均値から, 各不正咬合の歯列弓形態並びに咬合の特徴と1年間の平均変化量について, 二, 三の知見を得た. 水平型開咬は, 吸指癖の影響がoverjetと歯列弓高に大きく現れているが, 歯列弓形態にはあまり大きな変化を与えてはいない. 即ち, 2〜3歳児で歯列弓幅が小さくなる傾向があるが, その後は僅かに増加し, 正常乳歯列と同様な成長変化を示し, 影響を後まで残してない. 従って, 開咬は吸指癖による上下顎前歯の僅かな傾斜及び下顎の僅かな遠心位などによって生じたものと考えられる. このように水平型開咬は比較的軽症なため, 1年の間に治癒するものがかなりの数観察された. 一方, 垂直型開咬は, overjetが水平型よりもやや小さく, その分, 垂直方向に空隙をつくっている. 従って, 歯列弓高は大きくなる. 上顎の歯列弓幅は全ての部位で小さく, 水平型よりも吸指癖の影響を強く受けているように思われた. 前述の要因の他に, 吸指癖による上顎歯列の狭窄, 下顎前歯の圧下が生じたものと考えられる. しかし負のoverbiteは減少し, 上顎の歯列弓幅も僅かな増加を示し, 垂直型においても良化の傾向が認められた. 前歯反対咬合では, 上顎の歯列弓長が小さく, 上下顎第2乳臼歯の遠心面の関係は殆ど近心階段型, 犬歯関係も約半数がclassIIIという特徴を示し, 上顎切歯の舌側傾斜及び下顎の近心位が疑われた. 上顎乳犬歯間の歯列弓幅の平均変化量は小さく, 上顎前方部の側方成長はやや抑えられているようだ. 上顎の歯列弓長は, 正常乳歯列の平均成長からすると, 一般に減少するが, 反対咬合の乳歯列期半群では僅かに増加した. これはこの群に自然治癒が5例認められ, これらすべてのcaseで上顎乳切歯の唇側傾斜があったためと思われる.
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