研究概要 |
1 成人の歯科疾患とそれに関連する要因についての研究: 昭和58年から5年間に, 40〜59歳の成人557人について歯科健診, 健康教育, および一部にたいする個別歯科保健指導を実施した結果, Periodontal Indexとdebris scoreとの間には, 診査年にかかわらず, 40-49歳, 50-59歳のいずれの年齢群においても有意な正の相関があった. 一方, Periodontal Indexと年齢との間には, 40-49歳においては昭和58, 59, 60年は有意な正の相関がみられたが61, 62年は有意な相関はみられず, 50-59歳においてはいずれの年もPeriodontal Indexと年齢との間に有意な相関はなかった. このことより口腔清掃状態は歯周疾患と密接な関連を有するが, 教育, 保健指導により年齢の歯周疾患にたいする影響は弱くなると推定される. 2 効果的な成人歯科健診の実施方法に関する研究: 上記の歯科健診において唾液潜血反応を測定し, 歯周疾患のスクリーニングとしての有用性を検討した結果, 敏感度75%, 特異度74%でPeriodontal Index8の部位を有する者を摘出し, Bacteroides Gingivalisにたいする血清抗体価の測定によると, Periodontal Index8の部位を有する者については敏感度44%, 特異度88%, Periodontal Index6以上の部位を有する者については敏感度73%, 特異度48%の精度であった. 3 成人歯科保健事業の実施体制とその効果についての研究: 個別歯科保健指導を実施した成人の, 指導実施前後のdebris scorc Periodontal Indexの変化を, 非指導群と比較すると, いずれも指導群が有意に大きな減少を示した. また非指導群においても, 初回診査と昭和62年の間でdebris scorc Periodontal Indexの双方の減少が見られた. 成人の歯周疾患の予防には, 集団を対象とする健康教育, 個別歯科保健指導がそれぞれ効果的であるといえる.
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