研究概要 |
Bacteroides gingivalisとActinobacillus actinomycetamcomitansから超音波処理によって抽出した抗原に対する人の唾液中IgA抗体価の測定を行い, 歯周ポケットの深さとの関係について検討を加えた. 成人型歯周炎患者45名より全唾液を採取し同時に各人の全歯牙について歯周ポケットの測定を行った. 唾液中IgA抗体価の測定にはELISA法を用いた. 先ず, タン白量3μg/mlになるように0.1M Carbonate buffer, pH9.6に溶解した抗原をプレートの各ウェルに150μl加え, 4°Cで1晩コーティングをした. 0.5%BSA, 0.05%Tween20, 0.02%NaN3を含むPBS(PBST)で洗浄後, 被検唾液150μlを加え, 室温で4時間反応させた. 洗浄後, PBSTで1000倍希釈したアルカリフォスターゼ標識抗ヒトI_gAα鎮抗体150μlを加え, 室温で一晩反応させた. その後, 酵素基質溶液(1mG/mlになるようパラニトロフェニルリン酸2ナトリウムを10%ジエタノールアミン緩衝液pH9.6に溶解)150μlを加え, 37°C30分間反応後, 405nmにおける吸光度を測定した. 標準唾液の段階希釈を用いて作製した標準曲線は, log-legit変換して直線に回帰でき, 広い範囲で抗体含有量を定量することが可能となった. その結果, 4mm以上の歯周ポケットを有する者は, そうでない者に比べて, B.gingivalis及びA.actinomycetemcomitans両抗原に対して, ともに有意に高い抗体価を示し, 5mm以上の歯周ポケットを有する者は, そうでない者に比べて, B.gingivalisに対してのみ有意な高抗体価を示した. 従って, 成人型歯周炎の重篤度とB.gingivalisに対する唾液中IgA抗体価に関連性が認められるように思われたが, B.gingivalisの血清学的性状について研究を進めたところ, 人工腔内には二以上の血清型のB.gingivalisが存在することが明らかとなった. そのため, 各血清型別B.gingivalis抗原を用いた, 再度の唾液中I_gA抗体価の測定が必要であると思われ, さらに検討を進めていく予定である.
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