研究概要 |
歯周病の予防と治療のため、歯周病原性細菌を抑制する抗生物質を探索した。被験菌種としてはBacteroides属の9菌種12株,Actinobacillus actino-mycetemcomitans10株,Haemophilus属3菌種3株,Fusobacterium nucleatum1株,Eubacterium属3菌種4株,Capnocytophaga1菌種1株,Eikenellacorrodens1株,Streptococcus属10菌種37株,Actinomyces属3菌種10株の合計79株を用いた。抗性物質としては、テトラサイクリン,リンコマイシン,クリンダマイシン,エリスロマイシン,アンピシリン,メチシリン,セフデゾール,セフメタゾール,セフォタキシン,チオラクトマイシンなどを用いた。抗生物質の抗菌活性は、最小発育阻止濃(μg/ml)で求めた。 その結果、歯周病原性細菌として注目されているA.actinomycetemcomitansやB.gingivalisにはテトラサイクリン,クリンダマイシン,エリスロマイシン,アンピシリン,セフテゾール,セフォタキシン,チオラクトマイシンなどが有効であった。そのなかで、Nocardia属由来のチオラクトマイシンはこの2菌種を比較的特異的に抑制した。 なお、B.gingivalisのタンパク合成や疎水性に及ぼす低濃度のチオラクトマイシンの影響について調べるために、1〜2μg/mlの同抗生物質存在下でB.gingivalis381株を培養した。ついで、全菌体をSDS抽出したあとSDS電気泳動を行った結果、タンパク質の泳動パターンは対照と変わらなかった。菌体の疎水性にも変化はなかった。 以上の結果から、チオラクトマイシンが菌周病の予防や治療に役立つ可能性が示唆された。
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