研究概要 |
本研究の目的は, 新しい反応の開発を通して抗腫瘍物質セスバニミドAの全合成を達成することであったが, その目的をほぼ達成することが出来た. 以下に概説する. セスバニミドAの特徴のひとつであるグルタルイミド環を構築するには, α,β-不飽和エステルへのアセトニトリルアニオンの1,4付加反応, ニトリル基のアミド基への選択的加水分解, そして閉環反応の3ステップが最も単刀直入な経路と考えられた. トリメチルシリル化したアセトニトリルのリチル化体を用いると, アセトニトリルの1,2-付加反応性を1,4-付加反応性に転換出来ることを見つけ, 短段階グルタルイミド環合成法を開発することに成功した. 本反応を用い, D-グルコースから21ステップで天然型セスバニミドAの全合成を達成できた. また, 有効なC環形成の単位を光学活性体として不斉合成できる新しい不斉補助剤の設計合成に成功した. すなわち, 5員環ラクタムのγ位にトリチルオキシメチル基を有する光学活性ラクタムから導かれるα,β-不飽和イミドに対する1,4-付加反応, Diels-Alder反応はともに高選択的に進行し, 不斉補助剤を除去すると高い光学純度の生成物が得られた. 以上概説したように, 本研究の当初の目的であったセスパニミドAの合成に成功するとともに新たな位置および立体選択的反応の開発にも成功した. 今後, 本研究で得られた成果を益々発展させることが楽しみである.
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