研究概要 |
1984年DerynckらはcDNA解析により50アミノ酸よりなるヒト腫瘍細胞増殖因子(hTGF-α)の一次構造を明らかにした. 腫瘍細胞の無秩序な増殖を司る本物質の役割りを解明するために, 本物質の全合成を, 液相法と固相法の2種類の方法で全合成を行った. 1. h-TGF-αの液相合成: 50アミノ酸残基より成るhTGF-αを9個の区分ペプチドに分けてそれぞれを合成し, Azide法により縮合して保護基の付いたhTGF-αを得た. この際, 各アミノ酸官能基の保護基として, 新しく開発した1Mトリメチルシリルトリフラート(TMSOTf)で除去可能な保護基として〔Asp(OChp)His(Bom),Glu(OBzl),Arg(Mts),Cys(Aα),Tyr(cl2Bzl),Ser(Bzl),Lys(Z)〕を採用した. 採集脱保護, 及び空気酸化による活性体への誘導は検討中である. 2. h-TGF-αの固相合成: システインのSH基の保護基として酸処理に安定なアセトアミドメチル(Acm)基を用い, 不溶性ポリマー上でBocアミノ酸を順次縮合し保護ペプチドーレジンを得た. これを1Mトリメチルシリルトリフラート(TMSOTf)で処理し, Acm基を除く全保護基の除去とペプチドのレジンからの切断を行った. 次に得られたAcm-ペプチドのAcm基を新しく開発したAgOTf(トリフルオロメタンスルホン酸銀塩)/TFA系で脱保護し, チオールによる脱Ag操作の後, 空気酸化を行い各種クロマトにより精製し目的とするhTGF-αを得た. 本合成品(10ng/ml)は, hTGF-β存在下, 寒天培地においてNRK-細胞に対してコロニー形成活性を示した.
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