研究概要 |
DNAの構成成分であるチミジン類の酸化的損傷は突然変異, 老化等と深くかかわっている. チミジン類の生体内での酸化反応に関連し, 以下に述べる成果を得た. 1.生体内で生成する過酸化物等の酸化剤はチミジン等を酸化し損傷を与えると考えられる. この仮定のもとにチミジン類とメタクロロ過安息香酸との反応を検討し, シスグリコールエステル体を主成績体として, 又スーパーオキシドとの反応ではピリミジン環が五員環になった化合物を得, それらの構造を明らかにした. 中間体としてエポキシ体あるいはその等価体を想定した. 1.前述のエポキシ体のモデル反応として1,3-ジメチルブロムヒドリンから製したエポキシ体とアミン, アミノ酸とのクロスカップリング反応を検討し, 各成績体の立体構造を明らかにした. その際三弗化ホウ素で処理するとトランス体からシス体へ異性化する事を見出し, そのメカニズムを明らかにした. 1.チミジンエポキシド(A),(B)についても同様に反応を行ない, 各成績体の立体構造を明らかにした. その際チミジンブロムヒドリング熱や光で正常チミジンにもどる事を見出した. 本反応はラジカル機構を経由して進行している事も明らかにした. 以上生体内におけるチミジン類の酸化的損傷およびこれに伴う生体内求核剤によるクロスカップリング反応のみならず, 酸化的に損傷を受けたチミジン類の正常チミジン類への修復に関する有用な知見を得た. これらの反応はチミジン固有の構造と機能に由来するものと考えられ, チミジンが生体内における核酸の損傷と修復に関して重要な役割を果していると考えられる.
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