研究概要 |
エステルのエノール型誘導体であるケテンアセタール体(1__〜)は, 溶液中で元の安定なエステルに戻ろうとする性質が大きい. 申請者らは溶液中に求核剤(NuH)が存在するとLのEが攻撃され, 定量的にNuEを与える事を見い出した. また, この型の反応剤の中でケテンシリルアセタール(1a__〜,E=silyl基)はcH_3cN中カルボニルやエノン等の不飽和結合を有する化合物と容易に反応し, O原子にシリル基転移を起こした付加体を与える事を見い出している. 本研究では中性条件又は中性に近い緩和な条件下で起こる上記反応の拡張を計り, 16__〜(E=acyl基)の型の反応剤が優れたアミド化剤になる事や, 1a__〜がスルホキシド類のPummerer型反応剤になる事を明らかにした. また, 1a__〜とD-グリセルアルデヒド及びその誘導体との反応により天然並びに非天然型の光学活性なペントース類の不斉合成に成功した. この反応をニトロン類に応用して立体選択的に1.3-付加体を得ることが出来たが, これにりL-ダウノサミンをはじめその他のアミノ糖の不斉合成を行った. スルホキシド類と1a__〜とのPummerer型反応を他の求核種の存在下で行い, シロキシ基の代わりに他の求核種が導入された化合物を得る事が出来た. この反応を分子内の系に応用し, 末端にアミドを有するスルホキシドと1a__〜を反応させると分子内Pammerer型反応を起こし, α-チオラクタムを収率良く与える事を明らかにした. これらの反応は5〜7員環ラクタム類の他, 4員環ラクタム(β-ラクタム)類の新合成法として確率することが出来た. 現在, 末端アミドの他, 分子内に他の求核種や活性オレフィン類を有するスルホキシド類と1a__〜との反応による新しい環形成反応を検討中であり, 着々と成果があがっているところである.
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