研究概要 |
フィリピン産薬用植物のうち, 汎用されるもの25種を選び, 抗炎症, 抗アレルギー作用の指標となる「マストセルよりのヒスタミン遊離抑制活性試験」を行ったところ, 特にその中の4種類の植物に強い活性が見出されたため, その内の2種の植物について活性本体の化学構造を追求した. 「チャアン・グーバ」はムラサキ科Ehretia microphyllaの乾燥葉であり, 腹痛, 鎮咳, その他抗炎症に関連した目的で使用され, フィリピン政府が重点的に研究, 開発を目指している薬用植物の一つである. 本生薬のメタノールエキスを各種溶媒に転溶し, 各分画の活性を測定したところ, 中程度の極性を持った画分に活性が存在し, これを, シリカゲル, ダイヤイオンカラムクロマトグラフィーを繰り返し, 最も活性の強い画分から結晶性物質を得た. 本物質は不安定なフェノールカルボン酸でアセチル化により精製し, 各種スペクトル分析の結果ローズマリー酸と同定した. 本化合物はシソ科に多く含まれ, ムラサキ科からも単離の報告はあるが, 本植物からは初めての例である. なお, 本化合物には強いヒスタミン遊離抑制活性のみならず, 抗炎症活性が存在し, 本生薬の活性本体と思われる. 次に, 「ラグンディ」の活性成分を追求した. 本生薬はクマツヅラ科のVitex negundoの乾燥葉であり, 民間的に, 鎮咳, 解熱等に用いられ, やはり, フィリピン政府の最重点生薬の一つである. 本生薬を各種溶媒で抽出し, 活性の強かった酢酸エチル分画よりシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより, 4種のフラボノイド化合物を単離し, カスチシン, クリソプレノールーD, ルテオリン, イソオリエンチンと同定した. このうち, クリソプレノールーDとルテオリンには中程度(IC50 50〜100μM), イソオリエンチンには強い活性(IC50 5μM), が認められ, この生薬の効果を薬理学的に証明するとともに, 活性の本体の化学構造を明らかにすることが出来た.
|