研究概要 |
生体中微量成分の合成研究の一環として, 酵素化学的手法を用いたプロスタグランジン(PGs)並びに血小板活性化因子(PAF)の合成研究を行うと共に, 本手法を利用した合成化学上有用なキラルシントンの合成について検討した. 61年度, 62年度に得られた成果の概要について述べる. 1.プロスタグランジン類の合成研究 (1)ビシクロ〔4.3.0〕ノネン誘導体の微生物還元を鍵段階とするカーバサイクリンの合成に成功した. (2)メソ型3置換5員環誘導体の酵素不斉加水分解により, 高光学純度のキラルシントンを得ると共に, 11-デオキシPGs中間体に変換した. (3)(±)-5員環ジエステルのエナンチオ選択的酵素加水分解により, PGA_2の合成に成功した. 2.血小板活性化因子(PAF)の合成研究 (1)メソ型グリセロール誘導体の酵素不斉加水分解により2, 3-O-イソプロピリデンーsn-グリセロールを合成した. (2)分子内にジチオアセタール基を有するα-ケトエステルの微生物還元反応を詳細に検討した結果, 光学収率, 化学収率共に良好な結果を与える酵母菌を見い出した. 得られた光学活性α-ヒドロキシエステルより, PAF合成中間体である(-)-バチルアルコールへの変換に成功した. 3.酵素化学的手法による有用キラルシントンの合成研究 (1)Pseudomonas fluorescens lipaseが種々の五員環アセテート類の加水分解において極めて高いエナンチオ選択性を示すことを明らかにすると共に, 本酵素のメソ化合物に対する挙動に関しても興味深い知見を得た. (2) 五員環及びビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体の酵素加水分解について広範な検討を行ない, 本法がキラル化合物合成に有効であることを明らかにした. (3)多官能性5員環化合物の微生物還元により, 種々天然物合成に有用な光学活性体を得ると共に本化合物を利用した(-)-α-, (+)-β-クパレノンの合成にも成功した.
|