研究概要 |
前年度までに, 蛋白質中のトリプトファン(Trp)含有フラグメントを高感度, 高選択的に捕集する方法を確立できた. 即ち, 蛋白質中のTrp含有ペプチドをわれわれが開発した蛍光性Koshland試薬(FKR)の誘導体とし, FKR分子のキレート能を利用してFKRラベル化ペプチドのみをキレートカラムで捕集後, EDTAで溶離し, 最終的に逆相HPLCで単離するものである. 今年度は, 単離したFKRラベル化ペプチドが, 通常行われているアミノ酸配列分析法で分析が可能かどうかを検討した. Trp含有ペプチドフラグメントのモデルとしてLeu-Trp-Met-Arg-Phe-Alaを選び, これをFKRでラベル化後, フェニルイソチオシアナート(PITC)を用いる用手法Edman分解を試みた. 1サイクルが終了するごとに反応物の一部を加水分解してアミノ酸分析を行なう方式(消去法Edman法)でシークエンスを調べたところ, 1サイクル後にLeuが消失し, 2サイクル後は1サイクル後と同一パターンであり, 3サイクル後にMetが消失したことが確認された. この結果は, Trp含有フラグメントをFKRでラベルしても, Edman分解が正常に進行することを示すものである. 従って, 今年度の研究結果により, 蛋白質中のTrp含有フラグメントの選択的な切り出しと, そのアミノ酸配列決定法が確立されたことになり, 遺伝子工学技術を利用して蛋白質の一次構造を推定する手法を著しく簡略化できるものと期待される.
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