研究概要 |
逆相ミセルの内殻水量の変化とともに、内殻水の粘度,極性,活量などが連続的に変化することから、逆ミセルの内殻水中での化学反応を内殻水量によって制御しようとする試みが期待されている。そこで内殻水中での酵素反応を研究する基礎研究として、【NAD^+】(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の母核であるN-アルキル-3-カルバモイルピリジニウム塩へのシアンイオンの付加反応を逆ミセル中で検討した。 その際、種々の実験条件及び解析法を適用して、内殻水の役割を研究した。その結果、アニオン界面活性剤逆ミセル中では内殻水の少いとき若干付加反応は促進されるが、カチオン界面活性剤逆ミセル中では内殻水量を減少させていくと反応速度ばかりでなく、生成定数も著しく増加した。また得られたシアン付加体は水中やアニオン界面活性剤逆ミセル中では非常に不安定であるが、カチオン逆ミセル中では、長時間安定であった。従ってカチオン界面活性剤逆ミセルはこの付加反応に優利な反応場であることが判明した。そこで逆ミセル中での付加反応を熱力学的に解析した結果、アニオン界面活性剤逆ミセル中ではエンタルピー効果が作用しているが、カチオン界面活性剤逆ミセル中ではエントロピー効果が大きく関与していることが明らかとなった。この結果は【NAD^+】と酵素との関りの解明への手がかりを与えるかもしれない。 そこでカチオン逆ミセル中で、【NAD^+】が補酵素として作用するアルコールデヒドロゲナーゼの酵素反応を試みた。逆ミセル中で酵素活性が認められたので、現在、内殻水量,酵素量,【NAD^+】,基質濃度,pHなど最適条件を検討し、定量的に解析中である。
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