研究概要 |
1.キャップ結合タンパク質の単離, 精製およびアミノ酸組成の特徴 材料としてrabbit reticulocyte ribosomeを用い, m^7GTP(キャップ構造の一部)を結合したSepharose 4B(合成して得た)によるアフィニティークロマトにより, mRNAのキャップ構造を特異的に認識するキャップ結合タンパク質(CBP)の単離精製を試みた. この酵素は生理条件下で比較的早く(数日以内)失活するため, 種々の物理化学的性質を解明するに必要な量を得ることは極めて困難で, 現在cDNAからのクローニングによるCBPの多量分取を計画している. しかし, 得れらたCBPのアミノ酸分析は, この酵素は4〜6個のトリプトファンを含む, 他にあまり例のない特異的なタンパク質であることが判明した. 2.芳香族アミノ酸とキャップアナログとの相互作用研究 CBPのアミノ酸分析によりTrpはキャップ構造認識に重要であることが示唆された. それ故, Trpとキャップ構造の特徴であるワーメチルグアニン(m^7G)誘導体との相互作用について, NMR等の分光化学的手法, X線解析を用いて研究した. その結果, 両化合物は電荷移動を含むスタッキング相互作用で強く結合することが判明した. さらに芳香族アミノ酸のm^7Gへの結合力はTrp>Tyr>Pheの順であり, 各アミノ酸とm^7Gとの会合定数や熱力学的パラメータから, 相互作用についての詳細な構造化学的考察を行った. 3.キャップ構造の化学合成と芳香族アミノ酸含有ペプチドとの相互作用 上述の結果を基に, キャップ構造末端部分を構成するm^7GpppAの化学合成を試み, 多量合成へのルートを開発し, それと芳香族アミノ酸含有ペプチド(化学合成より得た)との相互作用について, 主にNMRによる解析を行った. 結果として, キャップ構造の特異的認識には(1)トリプトファンのインドール環とm^7Gとのスタッキング結合, (2)酸性アミノ酸側鎖のカルボキシル基とm^7Gとの水素結合が必須であることを結論した.
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