研究概要 |
本研究では, 糖含有膜タンパク質と性格づけられるNaチャンネル分子の生体膜中における立体配置について, そのタンパク構造的視点と機能部位検索という視点とから検討を加え, チャンネル作用機構を実体に則して説明しうる「構造モデル」を描き出そうとするのが目的であった. さいわい2年間の研究で, その目的の過半を達成することができたので, 以下に成果の概要を述べる. 1)テトロドトキシン誘導体による光親和性標識:合計4種の光反応性テトロドトキシン誘導体を合成した. これらの化合物は結合親和性の点ではいずれも, テトロドトキシンと遊色しないが, 光反応効率や生成物の安定性などを総合的に比較検討し, フェニルジアジリン基をもつ化合物を最適なものとして選択した. 現在, これを用いた研究が鋭意進行中である. 2)抗ペプチド抗体を用いたチャンネルトポロジーの解析. チャンネル分子中の特定部位にたいおうするペプチドを合成し, これらに対する抗体3種を作製した. これを用いた免疫化学的解析から, C末端近傍は細胞質側に局在し, またS4セグメント(チャンネルのセンサー部候補である)は奥まった部位に, かなり強固な構造をとっていると考えられた. N末端近傍は, 予想に反して膜の外側につき出した形で存在するという興味ある結果が得られ, この確認実験を急いでいる. 3)糖鎖結合部の解析とその糖鎖構造:精製Naチャンネルのトリプシン消化物の中から, 2種の糖ペプチドを分離・解析した. そのうち1個は1192〜1213番目のペプチドと同定され, 主要糖鎖はSer又はThrに結合したムチン型糖鎖であった. いま一つはC末端近傍の配列をもつが, この結果は三つのペプチド混合物の最少のものについてのデータなので, 再検討が必要である.
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