研究概要 |
リンパ球マイトーゲン受容体の機能の解析のため, 受容体刺激とカップルした現象であるイノシトールリン脂質代謝において鍵を握る酵素, イノシトールリン脂質特異的ホスホリパーゼC(PI-PLaseC)を精製するとともにその制御因子を検討した. マウス胸腺リンパ球より膜結合性PI-PLaseC)と可溶性PI-PLaseCを部分精製し, その性質を検討した結果, 細胞の生理的条件下(pH, 細胞内Ca^<2+>濃度, リン脂質等)ではホスファチジルイノシトールよりホスファチジルイノシトール4,5ニリン酸(PIP_2)の方が分解されやすいことが判明した. このことはPIP_2分解により生じるイノシトール三リン酸の情報伝達系での重要性を考えると興味深い. Ca^<2+>はPI-PLaseC活性の重要な制御因子であるが, 刺激に伴う細胞内Ca^<2+>濃度の上昇のみではPI-PLaseC活性の上昇を説明することができない. そこで量を十分得られる牛胸腺リンパ球を用いてPI-PLaseCの制御因子を検索した. 細胞質画分よりPI-PLaseCを各種クロマトグラフィーを用いて精製したところ, 電気泳動的に均一な標品が得られその分子量は, 68KDaと計算された. またこの酵素と親和性のあるGTP結合蛋白も精製された. このG蛋白画分はSDS電気泳動で54, 41, 27KDaの3本のポリペプチドを含むことが示された. この事実に加え, GTPとGTPrSが3mMEGTA存在下で部分精製PI-PLaseCのPIP_2分解活性を増強し精製酵素の活性には影響しないことからPI-PLaseCは物理的にG蛋白と親和性を有しているのみでなく機能的にも結びついていることが判明した. このG蛋白の性質を種々検索した結果27KDaポリペプチドにPI-PLaseC活性増強能が存在した. 以上の結果より胸腺リンパ球に存在するPI-PLaseCと親和性を有するGタンパク性は新種のものであり, その27KDaポリペプチドがPI-PLaseC活性の制御に関係することが明らかとなった. 今後このPI-PLaseCとG蛋白がリンパ球活性化の情報伝達系で果す役割を明確にすることが緊急の課題である.
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