研究概要 |
肥満細胞が毛細血管の周辺によく観察されることや創傷の治癒において組織周辺の肥満細胞数が増加する等の観察から, 肥満細胞が血管新生反応と関わりを持つと推定される. そこで本研究においては血管の新生反応と退縮反応が同時にみられるカラゲニン炎症モデルを用いて血管新生に関する因子を捜した. 1.血管新生因子検索のためのassay系の確立:卵漿尿膜を用いて発生時の血管新生を利用する方法と, ブタ大動脈由来血管内皮細胞を培養細胞として維持し, ^3H-チミジンのDNAへの取込みを指標とした細胞増殖活性に及ぼす影響をみる方法とを確立した. 2.カラゲニン肉芽炎症における血管新生因子:SD系ラットの背部皮下に空気8mlを注入後, 2%カラゲニンを空気嚢中に入れ炎症を惹起させた. カラゲニン肉芽の形成過程に伴い肉芽組織に血管新生が認められ, 肉芽退縮に伴い血管系が消失した. カラゲニン肉芽炎症浸出液中には血管内皮細胞の増殖を促進する因子と抑制する因子が存在していた. 前者は非透析性, 加熱ならびに低イオン強度処理に不安定であった. 後者は熱に安定な透析生の物質で, 細胞特異性があり血管内皮細胞の増殖を抑制したが, 繊維芽細胞の増殖には作用しなかった. 3.ウシ脳における血管内皮細胞促進因子:さらにカラゲニン炎症浸出液中には血管内皮細胞の増殖を促進する透析性物質が存在することがわかった. この物質は正常ラットの各組織に存在し, とくに脳に多く存在することが判明したのでウシ脳を用いてその性質を検討した. この低分子物質は熱や酸, アルカリ処理に対し安定であり, 1%牛胎児血清を含むDM EMにおいて増殖促進効果を示した. またこの条件下で繊維芽細胞成長因子(FGF)の作用を促進した. また本物質の効果は血管内皮細胞に対して特異的であった. 今後以上3種の物質とりわけ最後に述べた物質の構造を明かにし, 肥満細胞を含めた他の細胞との関わりを検討する必要がある.
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