研究概要 |
本研究は近年, 社会の高齢化に伴い大きな問題となてっている老人性痴呆症の予防と治療薬の開発を目的とし, プロリン特異性エンドペプチダーゼに特異的なインヒビターが示す抗健忘作用の研究をおこなった. 1.インヒビター誘導体の開発:Z-Pro-prolinalのproを種々のアミノ酸に変え, 阻害力を検討した. その結果, Z-Thiopro-thiazolidine, Z-Thiopro-thiprolinalは牛脳由来酵素に強い阻害活性を示し, それらのKi値は4.6nM, 2pMと最も低い値を示した. 2.種々の行動薬理学的方法によるに抗健忘作用の評価:記憶の評価のための実験法として, マウスを用い, 電撃ショッや蛋白合成阻害剤などにより記憶喪失し, レバー押しオペラント学習法, 迷路法, ステップスルー法を組み合わせ, 実験を行った. 殆どの行動理学的試験に於て, プロリン特異性エンドペプチダーゼインヒビターは抗健忘作用を示し, 再現性が確かめられた. 3.マウス脳酵素の精製:マウス脳400個より高度に精製した酵素標品を得た. 酵素の分子量は76,000, DFPとPCMBにより阻害され, バンプレシンやアンジオテンシンのプロリンのカルボキシル基側を得意的に切断しその生理活性を消失させた. これ等の性質はこれまで報告してきたプロリン得異性エンドペプチダーゼとよく類似するものである. 4.インヒビーター投与後の脳内プロリン得異性エンドペプチダーゼ活性の変動:Z-Thiopro-thiazolidineの腹腔内および経口投与後, 経時的に脳内活性を測定した結果, 投与1時間後に酵素活性は元の30%にも低下し, 徐々に回復し24時間後には80%近く回復した. 5.バソプレシンのRIAによる脳内の定量:市販のラジオイムノアッセイキトを用い脳の各部位でのペプチドの存在量を測定した. インヒビーター投与後, 有意にバンプレシン量が増加した.
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