研究概要 |
食細胞のスーパーオキサイド(O^-_2)生成酵素は, 細胞膜に存在するNADPHoxidaseであり, 活性発現には数種類の構成成分の相互作用が必要である. 本研究では食細胞としてモルモット腹腔マクロファージ(Mφ)と多形核白血球(PMN)を用い, その構成成分の一つのフラビン酵素と考えられるNADPH-cytochrome c reductase(reductase)の構造と機能を調べ, O^-_2生成酵素活性化機構を明らかにすることを試みた. モルモットの肝reductaseに対するウサギ抗体(anti-reductase)と単クローン抗体(Manti-reductase)を新たに作成して実験に用いた. なお, anti-reductaseはTPA刺激後のPMN細胞膜のNADPHoxidase活性を阻害するが, Manti-reductaseにはこの作用は認められなかった. 両抗体を用いて, PMNとMφから分子量8万のreductaseを特異的に単離することができたが, reductaseは刺激, 未刺激後のPMNをPercollの不連続密度勾配遠心で分離すると, いずれも細胞膜に認められ, 局在性に変化はなかった. さらに, MφやPMNを刺激すると, 時間に依存したprotein kinase cによるreductaseのリン酸化が起こり, これに伴ってNADPH oxidaseの活性が発現した. 時間が経過するとやがて脱リン酸化反応が起こり, NADPH oxidase活の消失することが認められた. NADPH oxidaseの活性化機構の詳細を明らかにするためには電顕レベルでのreductaseの細胞内局在性をさらに解析することと, フラビン酵素の一次構造と機能を明らかにすることが必要であり, この点に関しては明確な結論を得ることができなかったが, 現在さらに研究を進展させている. いずれにしても本研究で得られた上記の結果は, O^-_2生成酵素のフラビン蛋白がNADPH-cytochrome c reductaseであり, このreductaseのリン酸化による構造変化がNADPH oxidase活性発現に必要な, cytochrome b_<558>などの他の成分との相互作用を誘発し, 脱リン酸化によって相互作用のできない構造にもどる可能性を示しており, NADPH oxidase活性化機構の分子レベルでの研究に大いに役立つことと考えている.
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