研究概要 |
1.ヒト胎盤ミクロソームを原料として、コール酸で可溶化後、コール酸と中性界面活性剤であるEmulgen913の存在下、DEAE-セルロース,ヒドロキシアパタイトおよびオクチルアミノアガロースカラムクロマトグラフィーを行ない、アロマターゼを精製純化した。 2.純化されたアロマターゼは分子量5.5万を示すチトクロームP-450であり、その酵素活性発現には、P-450,P-450還元酵素および補酵素としてNADPHの存在が必要である。しかしNADHの存在下では、ほとんど活性が認められずNADPHとの相乗効果も認められなかった。 3.Androstendioneを基質とした時、アロマターゼの触媒反応により、直接estroneが生成され、反応中間体は検出されず、そのKm値は30μMであった。また、testosteroneおよび16α-hydroxytestosteroneも基質となりestradiolおよびestriolが反応生成物として検出された。 4.アロマターゼのアミノ酸組成は高含量のMetとGlxを除いて、他のP-450と類似していた。アミノ酸配列分析を行いN末端から21残基のアミノ酸配列を明らかにした結果、N末端が3残基欠落している分子が全体の30%程認められ、本酵素の分子多様性が観察された。また、N末端近傍のアミノ酸配列は、疎水性アミノ酸から成りたっているが、その配列において、他のP-450と比較して大きく異なった。 5.カルボキシメチル化後、トリプシン処理を行いCysを含む4つのペプチドを分離し、配列分析を行い、他のP-450のヘムのコアのアミノ酸配列と相同性を検討した。その結果、非常に相同性の高い配列が認められるペプチドを検出し、チオレートリガンドを含む部分と考えられた。 6.P-450(アロマターゼ)に対する抗体を作成し、非常に免疫学的特性の高いIgGを得ることができた。
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