| 研究概要 |
真菌のステロール合成を阻害することによって坑真菌作用を発揮するアゾール系坑真菌剤の作用機構を分子レベルで確立することを目的として, 酵母から精製したラノステロール14-脱メチル化チトクロームP-450(P-450/14DM)との相互作用を詳細に検討し, 以下のような成果を得た.
1)アゾール系坑真菌剤はP-450/14DMに高い親和性を持って結合し, この酵素の活性を阻害することを証明し, アゾール系坑真菌剤の作用がこの酵素の阻害に基づくエルゴステロールの欠乏とラノステロールの蓄積に基づいていることを明らかにした.
2)種々のアゾール系坑真菌剤とP-450/14DMの親和性を定量的に比較し, この酵素に高い親和性を示すために必要な坑真菌剤の構造を推定することによって, 坑真菌剤の構造活性相関を議論するための基礎的なデーターを得ることができた.
3)光学活性を有する坑真菌剤の個々の光学異性体について, P-450/14DMに対する親和性及びこの酵素に対する阻害作用の強さを詳細に比較し, 特定の光学異性体がこの酵素に対して特に高い親和性を示すことを見出した. この知見は, 有力な坑真菌剤を開発するに当ってその光学異性体相互の活性を比較し, もっとも活性の強いものを選択して開発することが望ましいことを示すものである.
4)光学異性体を含めた数種の坑真菌剤と動物のP-450との相互作用を検討し, 酵母のP-450/14DMに対して高い親和性を示すものは酵母の酵素に対する選択性が高く, 酵母の酵素に高い親和性を示さないものは同じような濃度で動物の酵素をも阻害することを明らかにした. この知見は, 2),3),の知見と併せて, より安全な坑真菌剤を開発する際の参考となるものであると考えられる.
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