研究概要 |
本研究において, 我々はラット好塩基球細胞の脱顆粒反応とタンパクリン酸化反応の関係について検討した. 本細胞の抗原刺激に伴う脱顆粒反応には, C-キナーゼによる分子量36kDaの細胞膜結合性タンパクのリン酸化が必須であることはすでに報告した. 一方, 脱顆粒反応には細胞内収縮タンパク系が関与することが知られているが, 化学構造の異なる種々のサイトカラシン類の脱顆粒反応に対する効果を調べ, 化学構造の相違により, 脱顆粒を促進するもの(サイトカラシンBなど)と抑制するもの(サイトカラシンA, ケトグロボシンAなど)の, 相違する作用を持つものがあることも明らかにした. そこで, 脱顆粒を抑制するサイトカラシン類の作用機構を解析したところ, これらのサイトカラシン類は全てC-キナーゼを強く阻害し, 膜結合性36kDaのタンパクのリン酸化を抑制していることが判明した. なお, 脱顆粒に促進的に作用するサイトカラシン類にはC-キナーゼに対する作用は見られなかった. 抗原刺激にともない起こるもう一つの反応として, 18kDaタンパクのリン酸化も見出した. この18kDaのタンパクのリン酸化はCa^<2+>依存的であり, リン酸化されたタンパクは超沈殿によって沈殿することなどから, ミオシン軽鎖であると考えられる. さらに種々の薬物の脱顆粒反応に及ぼす効果について調べた. RBL2H3細胞は抗原刺激にともないPIの代謝回転とDGの生成が高められるが, DGの生成をネオマイシンで抑制すると, 抑制に相関して脱顆粒反応が抑制された. また, C-キナーゼの強力な阻害剤であるK_<252a>やstaurosporinによっても脱顆粒反応は強く阻害された. 本研究で我々が得た研究成果から, ラット好塩基球細胞の脱顆粒には, C-キナーゼの活性化にともなうIgEレセプターのβサブユニットと思われる. 36kDaタンパクのリン酸化およびCa^<2+>influxにともなうミオシン軽鎖(18kDa)のリン酸化が必須であることが示された.
|