研究概要 |
心筋硬塞をはじめとする虚血性心疾患が心筋内膜側に偏在することから, 疾患の好発部位である内膜側へ及ぶ血流の計測と, その血流の駆動力である心筋収縮力による血管のgeometry Dimension変化の計測を行った. 前者に対しては高度な分解能を有する光ファイバ型レーザードプラ血流計(LDV)を用いること, 後者に対しては新しいシリコン樹脂鋳型法を開発し, 両者を動物実験へ応用した. 光ファイバ型LDVについては既に心筋表面の冠血管の血流計測を行っているが, シリコン樹脂については基礎データが無いために, 初年度は樹脂そのものの基礎検討とラット, ウサギの心臓へ樹脂を注入し, 心筋内血管の鋳型モデルを作成し, 本法の応用の可能性を検討した. 次年度は, 成犬の心臓の動・静脈へ光ファイバを刺入し, 深部(中隔板:15〜20mm, 室間静脈:0.5〜3.0mm)の局所血流計測を行うと共に, 血流計測後, シリコン樹脂を動脈側から注入し, 心筋組織溶解後の鋳型モデルから, 血流のSampling点の同定, 灌流圧によるDimension変化の計測を行った. その結果, 心筋深部の血流は心筋のより強いContractionの影響を受けること, 収縮期の動脈の逆流と静脈の順流はReciprocal有関係にあること, 心筋表層と深層の間には血流の転流が見られ, それが血管拡張剤や心筋収縮力の増大によって助長されることなどが窺われた. 本研究では光ファイバ型LDVとシリコン鋳型モデルとの併用によってより詳細な心筋収縮力と心筋内血流動態との関連が一部明らかになったが, 樹脂自体の強度の問題で, Capillary領域までの解析には至らなかった. 今後, 樹脂の改良, 光ファイバの微細化などによって, より深部の微小血管のgeometry Dimensionと血行動態の関連を検討する必要が示唆された.
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