研究概要 |
優性遺伝性高脂血症の遺伝子座を同定する目的で, 病院の虚血性心疾患患者や集団健診で見い出された高脂血症の個体およびその家族について, LDLレセプター遺伝子, アポリポタンパクE遺伝子, アポリポタンパクAI遺伝子, およびアポリポタンパクB遺伝子の分析を行ない, 現在までのところ下記の成果を得た. 1.典型的な家族性高コレステロール血症の10家系のLDLレセプター遺伝子の分析により, 日本人の家族性高コレステロール血症の突然変異の起源が家系間で異なる傾向があること, 従ってLDLレセプター遺伝子のRFLPsを用いた遺伝子診断法が早期発見に有用であることを明らかにした. 2.アキレス腱黄色腫が超音波断層装置により, 簡便, 迅速, 正確に検出できることを明らかにした. さらに発端者が軽度のアキレス腱黄色腫と軽度の高コレステロール血症を有する優性遺伝性高コレステロール血症の家系は, LDLレセプター遺伝子のRFLPsと連鎖している家系と連鎖していない家系の2つに分けられることが判明した. 軽度のアキレス腱黄色腫と示す優性遺伝性高コレステロール血症の中には, LDLレセプター遺伝子以外の遺伝子の異常によって発現するものがあることが明らかになった. 3.少なくとも都市在住の男性成人については, 日本人でもアポリポタンパクE4遺伝子保有者が, 高コレステロール血症になりやすいことが明らかとなった. また, 日本人では, アポリポタンパクAIDNA多型のS2とM2が虚血性心疾患と関連のないことが示唆された. さらに, 私たちの集めた家系のデータから日本人でも, 白人におけるのと同じように, 家族性複合型高脂血症の頻度の高いことが示唆されたが, 遺伝子の同定はできなかった. 以上の研究結果から今後の研究課題として, アキレス腱黄色腫を伴う優性遺伝性高コレステロール血症とアポリポタンパクB遺伝子との関係を解明することが特に重要であると思われる.
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