研究概要 |
標記研究課題について以下の項目について研究を行い, 知見を得た. 1.胃粘膜病変の計量的測定法-急性胃粘膜出血の定量的測定を漏出赤血球数から捕える方法を考案した. 無麻酔拘束ストレスによる胃出血が, アスピリンやインドメタシンの投与により増悪されることを認めた. 2.胃粘膜病変に及ぼす薬物の効果-胃酸分泌を強く抑制するシメチジン, ピレンゼピン, オメプラゾールが胃粘膜出血を著明に抑え, また, 防御機構に作用する薬剤も効果的に胃粘膜病変の発生を抑制した. ウレタンなどの麻酔薬も有意な効果を持っていることも判明した. この結果は, 胃粘膜防御機構は胃酸分泌や粘膜抵抗性の他に, 神経性要因によって制御を受けていることを示唆するもので, 今後さらに検討を続けたい分野である. 3.薬物の副作用としての胃粘膜障害-制ガン剤, 抗生物質, 経口糖尿病治療薬, 循環系作用薬などが, 経口投与後, 動物でも胃粘膜障害を引起すことを観察した. これら薬剤の副作用は, 防御系に作用する抗潰瘍薬により, 効果的に予防することができた. 4.実験潰瘍の形成・進行過程と胃粘膜内プロテアーゼ活性の変化の関係 潰瘍形成前後時期の胃組織内プロテアーゼの変動を調べ, 潰瘍の初期形成あるいは進展との結びつきについて検討したが, ストレス潰瘍の場合, 潰瘍形成に先行して, 細胞内プロテアーゼ活性の上昇が見られたので, 潰瘍化の引き金としての役割が洞察された. 5.高エネルギーリン酸化合物と消化管機能との関係について-胃酸分泌, 実験潰瘍, 胃粘膜出血に対して, 外因性ATPは効果を示さなかった. この項目については, 種々のストレス負荷時の組織内リン化合物の測定を試みる予定にしていたが, 完成していないので, 今後も継続して検討を行う.
|