研究概要 |
「生体内微量金属の酵素的高感度分析に関する研究」を行ったが, この研究の骨子は次の3つに分類することができ, その成果は次の通りである. 1.酵素を用いた血清および尿中マグネシウムの分析法の開発に関する研究: ヘキソキナーゼ(HK)或はグルコキナーゼ(GK)とグルコースー6+リン酸脱水素酵素(G6PDH)を用い, NADPHの340nmでの吸収増加を測定することによって, 血清および尿中Mg2+を測定する方法を確立した. 両法共簡単で高価な機器を必要とせず, 本法により得られた結果は血清, 尿Mgの最も正確な測定法であるといわれている原子吸光法による結果と広範囲にわたって一致した. HK法は検量線の直線範囲は広いが試薬が不安定であり, 耐熱生菌Bacilus stearothermophilus由来のGKは非常に安定であった. HK法を固定化酵素と化学発光法を組込んだFIA方式に応用して, Mgの高感度分析法も開発した. 2.酵素を用いた血清カルシウムイオンの分析法の開発に関する研究: キャベツ由来ホスホリパーゼDはCa2+により活性化され, その程度をコリンオキシダーゼ・ペルオキシダーゼを用いて発色系に導いてCa2+濃度を求める測定法を開発した. Ca2+電極法に比べて本法は少量の血清量で測定可能である. Ca2+電極法では保存血清はアルカリ側へのpH移動のため使用できないが, 本法はpH7.4.の一定pHで反応が進行するため, 血清のpHがアルカリ側に移動しても, 測定時に元のpHに戻るため, その影響を受けない. 3.酵素を用いた亜鉛の分析法の開発に関する研究: 亜鉛酵素であるアルカリホスファターゼからキレート剤などを用いて亜鉛を除去すると活性が低下する. 次にそれに亜鉛を加えると活性が回復し, 回復した活性の程度を測定することにより, 加えられた亜鉛量を求める方法の開発を試み, 亜鉛量と酵素活性の間に直線関係を与える条件を発見したが, 血清を用いると少し問題があった.
|