研究概要 |
1.昭和51年4月1日〜昭和61年3月31日までの10年間に東京都下のK保健所にもちこまれた精神衛生相談事例のうちの637例を対象とし, 既存の「精神衛生相談記録」に基づいて, (1)相談のもちこまれた方, (2)相談行動を動機づけた出来事, (3)問題とされている人(本人)と相談にきた人との関係性, (4)その後に保健婦が行なった援助, の各項目にそって基礎資料を作成した. 2.精神衛生上の問題が顕在化してくる過程で近隣および関係期間が関与した事例のうち, 30例を抽出し, 相談行動の類型化を行ない, 初回相談面接のポイントを明らかにした. さらに, 本人の生活状況ならびに家族の本人を支える力量を検討し, 本人にアプローチする家族訪問の機能と家庭合同ミーティーングのもち方について明らかにした. 3.精神衛生上の問題の顕在化とサポートシステムの確立の過程において関与した関係機関職員との協同の組み方ならびに自助グリープの果たす機能と役割について検討した. とくに, K保健所デイケアに参加した85例を抽出し, 地域生活の継続を可能にする要因を明らかにし, サポートシステムの再編成の手がかりを見い出す基準を得た. 4.2で抽出した30例について, 問題が顕在化した時点で把握できた家族ケア能力を検討し, 力量別に類型化した. また, 類型別に保健婦がケア提供の過程で直面した問題状況とその克服のために必要とされたコンサルテーションサービスについて検討し, コンサルテーションが地域での生活の定着を支える地域内の受け皿とネットワークの活用を動機づける効果的な援助方法であることを実証した. 5.以上, 地域ケアを有効に展開するために必須であるコンサルテーションとそれを担う専門家育成のあり方に関する実践的教育研究が重要かつ緊急な課題であることが明らかとなった.
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