研究概要 |
炎症や感染などで大量に消費される白血球(好中球)を補充供給する機構に関与する我々が見出した新しい増殖因子についての研究である. ステロイド依存性白血球産生増強因子GDMP.Glucocortico d-dependent myelopotentiatorはマクロファージ細胞株P388DIからI.PS刺激によって産生される. 骨髄細胞とCSFによる軟寒天培養コロニー形成系に, GDMPとハイドロコーチゾン(HCS)を添加すると顆粒球(Gr)のコロニー数が対照(CSF単独およびCSF+HCS)の2〜3倍増加する. また, P388DI細胞の培養上清(CM)中にマウス骨髄性白血病細胞株MlをHCSに依存して分化を促進する活性を見出したが, この活性とGDMPとは同一因子であるが示唆された. この研究では, GDMPを精製すること, さらにMl細胞分化促進活性と同一因子であることを確認し, これを利用してGDMPの作用機作を調べる. さらに, 骨髄中のGDMP標的細胞を検討し, この因子の炎症における意義を追求する. 結果 1)P388DIのCMをFPLCのSuperose12とMonoQカラムで精製したところ, GDMPとM1細胞分化促進活性は同一画分に溶出した. 2)GDMP活性測定の簡便な指標はMl細胞の増殖抑制である. 3)GDMPはCSF, IL, TNFとは異なった. 4)骨髄細胞を沈降速度法で分画したところ, GDMP+HCSに反応してGrコロニーを形成する細胞は特定のサイズに分布していた. 5)HCSで一日培養したMl細胞でGDMP活性(ステロイド依存性Grコロニー形成促進とMl細胞分化促進活性)を吸収できたが, 無処理Ml細胞では吸収できなかった. 6)LPSをマウスに投与すると2-3時間をピークとして血中GDMP活性が認められた. 以上のことから, GDMPは炎症の際に, ステロイドと共同でGrを供給する働きがあることが示唆された. ステロイドはGDMPレセプターを, 骨髄の休止期にある特定のGr前駆細胞に発現させていると考えられる. そしてGDMPがその細胞に作用すると, CSFに対する反応性を得ると推定される.
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