研究概要 |
経絡・経穴系は鍼灸医学の根幹を成すものである. しかるにその実態はいまだに明らかではない. 筆者はこれまでの研究から経絡・経穴系は特異な組織構造をもつものではなく, 機能系として捉える方が適切であると考える. そこで経絡・経穴系の特異的機能について体表一内蔵反射という枠組から現象論的なアプローチを試みた. 方法としては胆嚢を標的臓器としてその形態変化(断面積)を指標に検討した. 刺激部位は丘墟穴, 胆嚢穴, 胆兪穴, 日月穴, 合谷穴, 丘墟穴と解谿穴の中間の非経穴とし, それぞれの部位の針刺激(通電刺激も含む)に対する胆嚢の形態変化を超音波診断装置で測定した. なお, 卵黄負荷によって誘発された胆嚢縮小状態下の丘墟穴, 合谷穴, 非経穴刺激の反応についても検討した. その結果は以下に示す通りである. 1)丘墟穴刺激では胆嚢の断面積は増大する傾向を示した. 2)胆嚢穴刺激では胆嚢の断面積は縮小する傾向を示した. 3)日月穴, 胆兪穴刺激では胆嚢の断面積は, 有効な変化を示さなかった. 4)合谷穴刺激では胆嚢の断面積は縮小傾向を示した. 5)卵黄負荷時では丘墟穴刺激および合谷穴刺激は胆嚢の縮小反応を抑制した. 6)非経穴部の刺激では胆嚢の断面積は有効な変化を示さなかった. このことは卵黄負荷時でも同様であった. 以上の結果より経絡・経穴の特異的作用はある程度存在することが示唆された.
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