研究概要 |
レーザー等を用いた慣性核融合において核反応の舞台となる様な, 高温・高密度プラズマ中のエネルギー輸送には種々の輻射過程が重要な寄与をする. 一方, 高密度プラズマでは, 構成粒子間に強い相関があるため, 輻射過程の諸確率は稀薄なプラズマとは大きく異っている可能性がある. この研究では, レーザー爆縮プラズマのパラメター領域で主要な過程である, 自由・自由および自由・束縛過程に関して, 次の様な事が明らかになった. 1.自由・自由遷移の断面積がイオン間の相関効果により著しく減少する場合がある. 減少率は電子の縮退度, イオンの結合度によって決まる振動数の関数である. 多種類のイオンが含まれる場合のイオン間相関を積分方程式に基づいて解析した結果, このときの減少率が一種類のイオンの場合の値により簡単に表せることが分かった. 2.自由・束縛遷移の断面積に対する高密度イオンの効果は2つあり, 一方は断面積を増加し, 他方は減少させる. 束縛状態が属するイオンの周囲の他のイオンによる振動電場の効果は, イオン間に相関がなくても遷移確率を増加する. これが前者であり, 後者はイオン間相関の効果である. この結果, 高密度でイオン間の結合が比較的弱いときには断面積は増加し, イオン間の結合が強いときには断面積は減少する. 3.電子・イオン間の相関の効果は, 電子によるイオン電荷の遮蔽と考えることができる. 電子遮蔽が線形応答で記述できる場合には, 電子・イオン間ポテンシャルの直接の遮蔽効果と, イオン間の相関を弱める効果とが, 自由・自由遷移に対してほぼ相殺していることが分かった. 一方, イオンの電荷数が大きく, 線形応答では記述できない場合には, 前者の効果が大きく, 自由・自由断面積は減少する. 自由・自由遷移と自由・束縛遷移を統一的に記述できる表式の検討, 自由・束縛遷移に対する電子遮蔽効果等の解析が今後の課題として残された.
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