研究概要 |
光学的信号処理手法には, 音声のスペクトルの時間変化パタンを分析窓を時間軸にそって移動することなしに得られる. パタン照合を光の伝搬速度で行える, という従来のデジタル計算機にない特長がある. 本研究はこのような見地から, 音声信号を対象とした光学的信号処理手法を確立することを目的とし, 以下成果をあげた. なお, 昭和61年度研究代表者広瀬の長期海外出張にともない, 昭和62年度は引地を代表者として研究を進めた. 1.音声のスペクトル分析及びパタン照合を行う光学的信号処理装置を作成した. 母音やCV音節音声を対象としてスペクトル分析を行い, 結果をデジタル計算機によるそれと比較して, 装置の動作を確認した. また, 連続母音音声を対象としたパタン照合を行い, パタンの一致度の時間変化が得られることを示した. 2.未知入力音声のスペクトルパタンと, 標準音声を光学的にスペクトル分析して得られる標準パタンプレートとを, 光学的にパタン照合することにより音声認識が可能である. 男性話者1名が発声した5母音音声を対象とした認識実験の結果は, 光学的パタン照合に基づく認識手法の有効性を示すものである. 3.窓プレートの透過パタン形状を制御することにより, パワースペクトラムの時間変化パタンの時間軸を非線形伸縮し得ることを実験的に確認した. 4.窓プレートとして写真フィルムにかえて液晶パネルを用いることにより, 時間軸の非線形伸縮を達成した. 合成信号や母音音声のスペクトル分析を行い, 現在の液晶パネルの問題点を明らかにした. 以上, 本研究の当初の目標は, ほぼ達成し得た. さらに, 音声信号プレート等の写真フィルムを書き換え可能な素子とし, 音声の分析・認識を連続かつ実時間で行うシステムの開発を目指す.
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